FM大阪 施設案内                                                                   

 

03.スタジオの音響

 

スタジオエリアの音響

 

放送局の設備を作るには、「音響設計」が必要となります。このコーナーではFM 大阪のスタジオ設備の音響設計について説明します。

音響設計では、マスター室、ラック室および各スタジオでの作業や用途にふさわしい検討を進め、部屋の静けさを確保するために暗騒音、遮音そして残響の目安を定めました。

 

【暗騒音】

階高5.5mを有効に使い、スタジオ上部に空調機器を置かず、スタンバイエリアや回廊等の共用部分に置くことにより、機器から発生する騒音を消音し、暗騒音の改善を行っています。

表は暗騒音目標値と測定値です(63Hz8KHzNC値)。

 

 

測定値

備 考

オンエアスタジオABブース

NC-15

4KHz以上NC-18

オンエアスタジオAB副調整室

NC-20

 

録音スタジオ12ブース

NC-15

4KHz以上NC-17

録音スタジオ12副調整室

NC-20

 

録音スタジオ3副調整室

NC-20

 

アナブース

NC-15

4KHz以上NC-18

EDスタジオ

NC-20

 

マスター室

NC-30

 

 

 

NC値:騒音の評価基準のひとつです。NC値ごとに騒音評価が別にまとめてあり、NC値を表に照らし合わせることで騒音に対する評価を行えます。

 

【遮音特性】

暗騒音と共に部屋の静けさを決める要素に「遮音特性」があります。

特に湊町リバープレイスの真ん中に「なんばHatch」という音楽ホールを抱くため、スタジオエリアへの音漏れ、振動などの影響が出ないように耐振構造の遮音層を持つ「浮き構造」を採用するなど工夫を凝らしています。

表に遮音特性実測値を示します。

 

音圧レベル

音圧レベル

 

(dB/125Hz)

(dB/500Hz)

オンエアスタジオA副調→録音スタジオ3副調

48

90以上

オンエアスタジオB副調→EDスタジオ

46

90以上

録音スタジオ2ブース→録音スタジオ1ブース

64

90以上

ラック室→録音スタジオ1副調

38

77

マスター室→録音スタジオ3副調

40

71

天井の遮音(スタジオエリア全般)

72

90以上

床の遮音(スタジオ副調)

65

90以上

床の遮音(スタジオブース)

72

90以上

 

 

【音場仕様と残響時間】

部屋の響きを検討する重要な要素に「残響時間」があります。

窓面積をできるだけ大きく取り、副調整室ではフロントにレンガタイルを使用するというデザインですので、スタジオの残響時間の予想計算を行い、それを元に内装の基本仕様を決めました。

内装の仕様は次の通りで、それに基づく残響時間を表に示します。

 

1)スタジオの壁の腰下部分のデザインは、スタジオブース、副調整室共に壁下の保護も考慮して高さ900mmまでの腰板塗装仕上げとする。

 

2)スタジオの腰上部分は室内音場を考慮して、クロスによる吸音仕上げとする。

 

 

3)副調整室の正面の壁はレンガタイルによる堅い反射板として、デザイン性を優先すると共に、スピーカー側を反射性、後方壁を吸収性とするモニター音場をつくる。ただし、レンガタイル壁の側壁の一部を吸音処理し、ミキサー位置(サウンドエンジニアが座る位置です)での定位や解像度に配慮する。

 

 

4)録音スタジオ3EDスタジオは部屋の容積を考慮してレンガタイル壁を採用しない。

 

 

5)スタジオブース及び副調整室の音響的な拡散性、低域の固有振動モードの分散を考慮して、出来うる限り不整形の部屋形状とする。

 

 

6)床はフローリングによる完全反射面となるため、天井はクロスによる吸引仕上げとする。

 

 

7)平面的な有効スペースを確保するために、壁は薄い吸音層にし、低音域の主な吸収処理は天井で行う。

 

 

8)壁面の吸音層には浮き遮音層と平行に芯材の両面にグラスウールを貼った吸音材サウンドトラップを吊ることにより、薄い吸音層でも効率的な吸音を図り、浮き遮音層からの反射音を利用しながらバランスの良い吸音処理を行う。

 

 

9)軽量鉄骨下地の金属鳴りを防止するために、壁のスタットにはグラスウールを充填し、銅差しの接点をタイルメントで接着するなどの処理を行う。

 

 

10)副調整室の天井はモニター音の入射音を考慮して、ミキサー位置より前は正面壁と平行にサウンドトラップを配置する。

 

 

11)天井内のコーナー部分はロール状のグラスウールを置き、中低域の吸音を行う。

 

 

12)窓ガラスは、高音域の拡散を考慮して、平面的または断熱的に傾ける。

 

 

13)スタジオはクリエイティブな空間であり、デザインも非常に大切な要素となる。「元気で人にやさしいスタジオ」というスタジオエリアのサブコンセプトを活かすために、デザインを主としながらも音場的に長時間作業に疲れない機能的な空間を作る。

 

 

残響時間(測定値)

 

残響時間(/63Hz)

残響時間(/500Hz)

オンエアスタジオAブース

0.35

0.22

オンエアスタジオBブース

0.35

0.22

オンエアスタジオA副調

0.45

0.27

オンエアスタジオB副調

0.45

0.22

録音スタジオ1ブース

0.29

0.18

録音スタジオ2ブース

0.39

0.18

録音スタジオ1副調

0.37

0.35

録音スタジオ2副調

0.42

0.31

録音スタジオ3副調

0.4

0.24

アナブース

0.33

0.18

EDスタジオ

0.27

0.24

マスター室

0.7

0.26

 

 

結果的に、全体的に窓面積を大きくし、また腰下まで木を使用したため、ややライブ気味な音空間になっており、部屋の雰囲気が良く演出される雰囲気となっています。

 

 

施設案内

01.          建物・ロビー

02.          スタジオエリア

03.          スタジオの音響

04.          放送システムの基本設計

05.          ABMシステム

06.          DAW

07.          DAWを使った制作

08.          APS・マスター設備

09.          DAFシステム

10.          スタジオの機器

11.          その他システム

12.          送信所・中継局

13.          電源設備

14.          空調・消火設備

15.          終わりに

 

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