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マスター装置

このコーナーでは、APC・マスター設備について説明します。APC・マスター装置は放送の送り出しの中枢です。

【マスター装置の概要】
マスター装置は、APC装置(自動番組送出装置)と組み合わせ、各送出方向別に単体機器等のプログラムの切換・送出を行います。
アナログ素材は中継装置のADC(アナログデジタルコンバーター)にてデジタル信号AES/EBUに変換されます。
デジタル素材はSRC(サンプルレートコンバーター)で受け、全て48kHzの同期信号により周波数ずれを防ぎ、音質に悪影響を及ぼさないようにしています。

【マスター装置の特徴】
(1)フルデジタル仕様
量子化ビット数24ビット、サンプリング周波数48kHz、リファレンスレベル-20dBFSのAES/EBUフォマットで統一しています。

(2)完全独立4方向送出
送出方向はSTL系(ローカル放送)、NET系(JFNへのネット送り)、DIG1系(地上デシタル音声放送CH1)、DIG2(地上デシタル音声放送CH2)の4方向です。

(3)完全二重化構成による高信頼性と保守性
APC(送出制御部分)及び各電源部等完全二重化構成とし、信頼性と安全性を高めています。
送出方向別に完全独立しているため、ある送出方向に障害が発生してもその他の送出方向には影響しません。

(4)緊急割込
送り出し部分の最終段に緊急割込系統を備え、割込素材はオンエアスタジオA、B、録音スタジオ3、アナブース及び無音プレーヤー(無音を検出した場合、自動的に曲などを再生する装置:放送上、無音になることを防ぎます)です。
また、緊急時などの場合のため、アナブースからの音声はMIX割込が出来ます。

(5)拡張性
APCはLANにより送出方向の増設が容易に行え、サテスタ装置により外部サテライトスタジオへのAPCの運行画面伝送、Cue信号や事前スタンバイなどの制御信号の送受が可能となります。
 

(写真) マスター装置

マスター装置の主な部分について説明します。

(1)中継装置
●局内のデジタル信号はAES/EBUフォーマットで装置間は75Ωの同軸ケーブルで、アナログ信号は入出力レベル0dBm、600Ωを原則に受け渡ししています。
●中継装置は局外回線の回線特性の補正として4CHのオートイコライザーを実装し、その出力(R1〜4)、ISDN CODEC出力(C1〜4)、JFNのCSサテライトネットワークシステムのネット受け出力(N1〜2、N-1 2系統)、交通情報等の情報系出力(RI、JI)、各スタジオからのN-1出力、各方向別マスター出力等(アナログ信号はA/D変換後)を32×40のデジタルMTX(マトリックス)に入力します。一部の素材はAPC素材としてデジタル出力を分配しています。MTX出力はAPC素材用に4出力、オンエアスタジオA、B、録音スタジオ3、EDスタジオなどに4回線、中継用CODEC、DAW-REC等に割り当てています。
●CODEC送りに対してはコンプリミッターにより、N-1等の返し素材のレベルがオーバーしないようにしています。
●その他、各送出方向のマスター出力のデジタル及びアナログ分配、オンエア分配、APCアナログ入出力素材のA/D・D/A、予備A/D・D/A、予備アンプ、ATT、トランスなど実装しています。

※ R1〜4、C1〜4、N1〜2、N-1、RI、JI などは、音声信号のラインに対して、名づけられた名称です。他の放送局では、異なった名称で呼んでいる場合もあります。
※ N-1とは、中継などの場合に中継先で自分が話した言葉が送り返されると話がしにくいため、放送そのものとは別に相手の音だけを伝える回線のこと。

(2)APC・主調装置
APC装置は送出方向別に汎用のパソコンを使用した二重系システムにて構成され、EDPS、VDT(APCの操作端末)からはLANで接続し、運行データ及び運行結果などのやり取りを行います。 音声切換部は信号の劣化の少ない高音質デジタルスイッチャーを使用し、デジタル信号の分配、切換、送出を行います。

(3)マスター室監視テーブル(手動操作卓)
マスター監視は従来のようなメカニックなものを避け、木製テーブルの上に監視パネルが置いてあるというイメージで作り、必要最小限の制御スイッチだけをテーブル面に埋め込み、手動クロスポイント制御及びオーディション選択はタッチパネル方式にしました。
 

(写真)マスター室監視テーブル(手動操作卓)